爪の先ほどの大きさの硬い羽の下から現れた虹色の薄い羽は1円玉大ほどに広がり、空気をつかむように上下に動き出した。九州大大学院芸術工学研究院の斉藤一哉准教授(42)が8年の挑戦の末にハイスピードカメラで撮影した、全長約1・5センチのハサミムシが飛び立つ様子だ。羽を持つ昆虫はあまたいるが、ここまでコンパクトに羽を折りたたむ技術を持つ虫は他にない。その謎の解明の先にあるのは、そう、宇宙だ。
航空宇宙工学を専攻していた斉藤さんは、人工衛星や宇宙探査機に適した材料や構造について研究し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究員の経験もある。大型の構造物をロケットに搭載して運ぶには、スペースを取らずに簡単に収納でき、宇宙空間では瞬時に展開できる機能性が重視される。東京大の助教時代に、自然界にある折りたたみ構造に着目したことが、昆虫の羽の研究を始めるきっかけとなった。
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