卓越―現代の名工(5)電子応用機械器具組立工・矢野泰三氏 時計組立工・深井英夫氏
電子応用機械器具組立工
大同特殊鋼・矢野泰三氏
幅広い知識、発想の源泉
子どもの頃から電子工作が好きだったという矢野泰三さん。中学生時代には既にプログラミングに触れていた。工業高校の先生に就職先として勧められた大同特殊鋼に入社。「電子回路設計やプログラミングなど、好きなことができる部署にたまたま配属された」と振り返る。
各種電子機器の内製化や製品検査装置の実用化、製造現場の自動化、省エネルギー化に貢献した。特に印象に残る仕事は、燃料電池用素材の表面の金メッキ膜厚をカメラで瞬時に測定できる装置の開発。「いろいろ調べながら一から考え、実験を繰り返して実用化した」ことに手応えを感じた。また、大型の製造ラインの工場設置時には、設計通りに動かないトラブルで何度か徹夜した。今でも先輩が差し入れしてくれた弁当の味を思い出す。
技能の習得はオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)が基本だが「いい先輩や上司に恵まれ、自分でやりたいようにやれと任せてくれたのでやる気になれた」という。自身も後進を指導する時は「ヒントや道筋は示すがあまり教え過ぎず、自分たちで考えたり調べてもらったりするようにしている」。
自主的に取り組んだ技能士資格の取得や、雑誌・専門書などからの情報収集も技能習得に役に立った。読書を通じて専門外の知識も得る。「知識がなければアイデアが出ないし、知識が狭いと応用できない」と、幅広い分野に目を向けることの重要性を強調する。
時計組立工
セイコーエプソン塩尻事業所・深井英夫氏
機械式の魅力、次世代に
セイコーエプソンの塩尻事業所(長野県塩尻市)は「グランドセイコー」などの高級腕時計の設計や組み立てを手がける。生産現場強化グループの深井英夫さんは、入社以来一貫して時計事業を歩む。現在は技能五輪大会に挑む後進の育成に向けてトレーナーを務める。「全国大会で優勝者を輩出するのが目標」と語る。
深井さんは入社3年目に時計技能競技全国大会で優勝。その後はムーブメント(駆動装置)の組み立てなどに長年携わってきた。腕時計の組み立ての中でも、機械式腕時計の調整が特に難しいとされる。「時計の心臓部であるテンプの調整がカギを握る」。調速機と脱進機の調整が技術の要で、1―2年かけて集中的に練習するような難度の高い作業だ。
テンプに組み込まれている渦巻き状のひげゼンマイの成形や調整には「苦労した」と振り返る。時計の精度を決める重要部品で、髪の毛よりも細い。渦巻き状に巻き上げるのは「感覚的なものになるため、何度も練習した」と明かす。得意とするこうした技を若手に伝承している。
若手には、部品に傷を付けないことや早く正確に作業することなど、基本的な製品に対する向き合い方を伝える。また地域の社会貢献活動では、諏訪市の小学生を対象にモノづくり教室として出前授業を実施する。時計の組み立てを通じて「時計そのものに興味を持ってもらいたい」と期待を込める。(おわり)
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