発酵文化のスペシャリスト小倉ヒラクさんが、「食」を起点に国内外の文化や歴史を掘り下げる連載です。ベーシック調味料の選びかたを踏まえたところで、今回はさらにディープな発酵調味料の世界へご案内します。
個性派調味料に挑戦!
皆さま、発酵してますか? 小倉ヒラクです。
調味料の選びかたの最終回。おみそ、しょうゆ、酢、みりんとベーシック調味料の解像度を上げたら、いよいよ応用編。色々なバリエーションの発酵調味料に挑戦してみましょう。世界を見渡すと星の数ほど発酵調味料があるので、今回はいちおう日本の日常的な食卓にマッチするものに限定して紹介していきます。
しょうゆや酢の応用編
それではまず比較的用途の広い応用調味料から。ベーシック調味料を一通りそろえたら、次は「八方だし」をゲットしたいところ。これは、カツオや昆布などのだし汁にしょうゆやみりんを加えて味を調えたもの。煮物でもおひたしでもお吸い物でも、これさえあれば味が決まってしまう魔法のような調味料です。
しょうゆの種類によって微妙にニュアンスが変わってくるのですが、オススメは白しょうゆをベースにした「白だし」。良い意味でコクや塩味などの”しょうゆ感”が目立たない、反則級に使いやすい八方だしです。近畿地方ではうす口しょうゆをベースにした琥珀(こはく)色の八方だしをよく見かけます。しょうゆやみその代わりに煮炊きに使うと、品のある料理に仕上がります(個人的にはおでんのベースにするのがお気に入り)。
なお八方だし(特に白だし)は和食以外にも使えます。カルボナーラやオムレツのような卵料理に非常にマッチしますのでお試しあれ。八方だしは全国の醸造メーカーの定番。僕が愛用しているのは愛知県、日東醸造の「三河精進白だし」。動物性の原料を一切使わない、品格のある味わいが素晴らしい。
次に標準の米酢「ではない」お酢もぜひ試してほしい!
例えば。大麦を醸したビールのようなもろみをお酢にしたモルトビネガーはシャープかつほんのり甘味を感じる酸味が、揚げ物によく合います。そう、イギリスのパブで定番のフィッシュアンドチップスにドバドバかけて食べるアレ。それがモルトビネガー。大手メーカーの商品もありますが、僕がお気に入りなのは、広島県の老舗、尾道造酢の「尾道モルトビネガー」。コクが深く、これだけをペロペロなめていたい……と思ってしまうかぐわしさです。
洋風といいつつ、すっかり日本の日常の食卓に根付いたソース。これもお酢がベースの調味料。トマトやりんごなどを煮込んだペーストに、お酢やスパイスをブレンドします。静岡県トリイソースでは、しょうゆのように木桶(おけ)に原料を仕込んで数カ月じっくり発酵・熟成させる魅惑のソースを醸しています。定番ラインナップのなかでも「桶底ソース」は、木桶の底のほうにたまった濃厚な部分を詰めたヤバすぎる逸品。「桶底ソース」をなめたら最後、フツーのソースに戻れなくなること必至……!
からの記事と詳細 ( 個性派調味料はこう選ぶ! 調味料の上手な選びかた(下) - 朝日新聞デジタル )
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