熊本大学は2022年12月26日、金属ハライドペロブスカイト型ナノ結晶(CsPbBr3)にフォトクロミック分子のジアリールエテンを結合させることで、ナノ結晶の蛍光発光を光刺激によって可逆的にオン/オフスイッチさせることに成功したと発表した。
光刺激によってオン/オフの切り替えができる発光スイッチング材料は、細胞や生体組織を観察するための超解像光学顕微鏡や光メモリなどさまざまな用途に応用されている。発光スイッチングの材料には従来主に有機色素が用いられてきたが、耐光性が低く発光強度が弱いことが課題だった。
今回の研究で利用したジアリールエテンは、外部からの光刺激によって無色の開環体と有色の閉環体の間を可逆的に異性化する。今回その性質を利用し、CsPbBr3ナノ結晶表面にジアリールエテンが結合したハイブリッドを合成。光刺激によってナノ結晶の発光をオン/オフスイッチさせることに成功した。
フェムト秒ポンプ・プローブ分光測定によって観測したところ、ナノ結晶から閉環型ジアリールエテンへの高速な電子/エネルギー移動が発生することでオフ(非発光)状態になり、ナノ結晶と開環体ジアリールエテンで構成される場合は同様の現象が見られず、高輝度の発光(オン状態)が維持されることが分かった。
それぞれの状態は、紫外光と可視光を交互に照射することで可逆的に移行できる。また、オン/オフ時の発光強度比が高く、今後さらに改良すれば超解像イメージング用の発光プローブやナノ光メモリなどの記録媒体へ応用できる可能性がある。
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