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Wednesday, July 13, 2022

筆記具の常識を覆した、こすれば消える「魔法のペン」…原点は真っ赤な紅葉 - 読売新聞オンライン

 書き損じても、ペンについたラバーでこすれば、インクの文字を消すことができるボールペン「フリクションボール」。パイロットコーポレーション(東京都)が2006年に発売して以来、シリーズ累計で37億本以上を売り上げる世界的なヒット商品だ。

 消しかすも出ない。「魔法のペン」に使われているインクは、「メタモカラー」。開発したのは、子会社のパイロットインキ(名古屋市)だ。摩擦熱で60度以上になると、インクが透明になり、マイナス20度まで冷やすと、再び文字が浮かび上がる。

 入社以来、メタモカラーの開発に携わり、現在は開発責任者を務める中島明雄さん(60)(パイロットインキ第2開発部長)は「長年にわたって積み上げてきた技術と応用がうまくかみ合って筆記具でのヒットにつながった」と語る。これまでに蛍光ペンやサインペン、スタンプなど様々なフリクションシリーズが登場している。

 「真っ赤な紅葉がフリクションボールのふるさとです」と中島さんは話す。

 1970年頃、パイロットインキの研究者だった男性が、紅葉の名所・香嵐渓(愛知県豊田市)を訪れ、秋の深まりで緑の葉が一夜にして赤く染まるさまを見て「紅葉のように温度の変化で色が変わるインクが作れないだろうか」と思いついたという。

 メタモカラーは、発色剤と発色させる成分、変色温度調整剤の三つがマイクロカプセル内に詰め込まれている。色を決める発色剤は単独では色は出ないが、発色させる成分と化学的に結びつくことで色が表れる。変色温度調整剤は、両者を結びつける温度を設定する役割だ。75年に特許を取得した。

 最初は、冷たい飲み物を注ぐと絵が浮かび上がるコップや、お湯に入れると色が消えるハンカチに使われた。80年代には、温水で顔をこすると化粧が浮かび上がる人形などに用いられ、子どもらの人気を集めた。当時から筆記具にも応用する話が持ち上がっていたが、中島さんは「まだまだハードルが高い」と感じていたという。

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