過去に経験のない猛烈な豪雨や台風など、近年わが国で頻発化・激甚化する自然災害。その中でも防ぐことが極めて困難で、かつライフラインへの長期にわたる影響が懸念される火山噴火にどう備えるかがクローズアップされている。国内には111の活火山がある一方で、現代の大都市が大量の降灰に見舞われた経験はなく、首都圏などの大都市に対して大規模噴火による大量の降灰が及ぼす影響は不明な点も多い。応用地質グループ企業で、災害リスクを予測し定量的に評価する専門会社の応用アール・エム・エスがまとめた関東地方の火山ハザード・リスク評価についてのリポートを紹介する。
同社のリポートでは、4月に内閣府の中央防災会議が公表した、富士山をモデルケースとした大規模噴火時の広域降灰対策に関する報告書の概要をウェブサイト上に公開。あわせて、関東地方での降灰リスクを把握するためには、富士山だけでなく、浅間山、榛名山などの火山や上空の風などの多様性を考慮することが必要だと指摘し、降灰によって引き起こされる家屋倒壊や鉄道への影響、停電など、各地域で起こるそれぞれの被害の発生確率などを、同社独自の取り組みとして算出し、公開している。
中央防災会議の広域降灰対策検討ワーキンググループ報告書では、富士山で1707年宝永噴火と同等の大規模噴火が発生した場合の降灰量分布について、「西風が卓越する」「西南西の風が卓越する」「変化が大きい南寄りの風」の3つの風向きを設定し、それぞれのケースで想定される影響とその範囲を例示。その上で、企業が火山の大規模噴火に備える場合、さまざまなケースの噴火による降灰量などのハザード情報や、主要事業と「交通インフラ」「ライフライン」「建築物・施設設備」との関連性を踏まえながら対策を検討していく必要があるほか、住民の避難行動の基本的な考え方を整理している。
一方で、関東地方周辺には富士山以外にも数多くの活火山があり、過去2000年間の噴火履歴をみると富士山に加えて浅間山と榛名山でも大規模降灰をもたらす噴火が計6回発生している。また上空の風によって降灰の分布に大きな不確実性があることから、同社では過去30年間の高層気象観測データに基づく、風の多様性を考慮した降灰ハザード評価とともに、ワーキンググループの成果を踏まえた降灰リスク評価事例を提示している。
その一例として、富士山の最大規模噴火を想定した場合の小田原駅のハザードカーブを見ると、ワーキンググループ報告書で雨天時に停電が発生するとされた降灰量0.3cmを超える確率は約70%、木造家屋が倒壊する可能性があるとされた降灰量30cmを超える確率は約30%と読み取ることができる。
このハザードカーブを面的に算出した上で、降灰による影響が出る降灰量の超過確率を読み取ることによって、火山噴火による影響が発生する確率を地図上で確認することができるという。
富士山が大規模噴火した場合の影響別の発生確率の分布図では、降雨時に家屋倒壊が発生する確率が神奈川県の広い範囲で20%を超える。また神奈川県、千葉県、東京都の広い範囲で停電が発生する閾(しきい)値の降灰量0.3cmを超える確率は50%を超えており、首都機能に致命的な影響を与える可能性が高い。
浅間山の大規模噴火では、降雨時に家屋倒壊が発生する範囲は群馬県と長野県内のごく限られた地域にとどまる一方、降雨時に停電が発生する可能性のある降灰量0.3cmを超える確率は、群馬県、栃木県の広い範囲で50%を超えるとともに、埼玉県、茨城県の広い範囲で20%を超える。
これらのことから、関東周辺の火山で大規模な降灰をもたらす噴火が発生した場合には、関東地方の広い範囲に深刻な影響が発生すると考えられる一方で、降灰は上空の風による影響が非常に大きく、将来の風を予測することは不可能なため、噴火発生時の降灰量を正確に予測することはできない。そのため、火山噴火によるリスク把握のためには、上空の風のばらつきを考慮したハザード・リスク評価が重要で、停電などのライフラインや交通インフラの機能支障が社会・経済活動に与える影響について考慮し、対策しておくことが重要としている。
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May 30, 2020 at 02:11PM
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【インフラに深刻な影響も】応用アール・エム・エスが火山噴火時のリスク評価リポートを作成 - 日刊建設通信新聞
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