東京大学発ベンチャー企業のACCEL Stars(アクセルスターズ、福岡県久留米市)は、世界最高水準の精度の装着型睡眠計測器の開発を本格化する。このほど個人投資家らを対象に約3.3億円の第三者割当増資を実施。調達資金でITや人工知能(AI)など先端技術を拡充し、人の眠りを科学的に分析して睡眠不足を改善する「スリープテック」と呼ばれる事業を加速する。スリープテックは健康管理・疾病リスクの軽減にも役立つとされ、新規参入も相次いでおり、今後の市場動向が注目だ。
アクセルスターズは脳や睡眠に関する研究を続けている東大医学部の上田泰己教授が昨年8月に創業。上田氏の研究に基づく高精度の睡眠と覚醒の解析手法を使った腕時計タイプの睡眠計測器などの開発に着手している。
同社によると、既存の睡眠計測器は、完全な睡眠状態を90%以上の高精度で検知できる一方、真の覚醒を間違わずに覚醒と判定する「特異度」が約20~50%と低いという。特異度が低いと、医学応用で重要な「中途覚醒」を正確に見分けられることができない。
中途覚醒は眠りが浅く目が覚めやすくなる状態のことで、上田氏の手法を導入した睡眠計測器は、特異度が高く、真の覚醒を80%超の高精度で検知するため、この中途覚醒を正確に把握できる。先端技術を用いて開発中の計測器は睡眠状態と中途覚醒の日時のほか、睡眠中の体温や血糖値、血圧なども常時計測できる。
中途覚醒を把握することは、眠りの質の改善だけでなく、鬱病などの精神疾患や発達障害をはじめとする脳と心の疾患の診断・治療・予防にも役立つ。アクセルスターズは計測器で得た睡眠データを、医療や創薬に応用することも視野に事業を進める方針。同社の宮原禎最高経営責任者(CEO)は「健康診断の中に睡眠に関する項目が加わることで、睡眠健康市場を新たに作りたい」と話す。
現在は東大内で計測器の実証実験を続けており、1~2年後をめどに医療機器として厚生労働省への承認申請も目指す。
スリープテック分野では、筑波大発ベンチャーのS’UIMIN(スイミン、東京都渋谷区)が昨年9月に独自開発の装着型睡眠計測器を使って脳波を測定する睡眠計測サービスを開始したほか、ニューロスペース(同墨田区)とO:(オー、同目黒区)が企業向けに睡眠改善プログラムを提供。オーダーメード枕販売のFutonto(フトント、同町田市)はスマートフォン向け睡眠計測アプリを手掛けるなど、新興企業による市場開拓が活発化している。
経済協力開発機構(OECD)によると、日本の平均睡眠時間は加盟国で最短の7時間22分。日本の人口に占める鬱病または鬱状態の人の割合は令和2年に17.3%と平成25年の2.2倍に達した。睡眠不足による日本の経済損失は年間で最大約15兆円とする米シンクタンク、ランド研究所の試算データもあり、眠りを改善するスリープテックの潜在需要は大きいとみられる。(松村信仁)
からの記事と詳細 ( 「中途覚醒」を正確に見分ける世界最高水準の睡眠計測技術 スリープテックを医学に応用 - SankeiBiz )
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