人の人工多能性幹細胞（iPS細胞）をカニクイザルの胚（成長した受精卵）に注入し、実験容器内で人とサルの細胞が混在した胚を生み出したと、米ソーク研究所と中国の昆明理工大の研究チームが15日付の米科学誌セルに発表した。人とサルの交雑個体を誕生させるのではなく、ブタの体内で人への移植用臓器をつくる技術を向上させるのが目的と説明。生命倫理に配慮し、サルの受精卵作製から19日で培養を打ち切ったという。 同誌は米スタンフォード大教授らによる「科学への信頼に重大な結果をもたらす恐れがある」とする批判も同時掲載した。 ソーク研チームは2017年、人のiPS細胞をブタ胚に注入して雌ブタの胎内に移植し、体の一部が人の細胞でできたブタ胎児を生み出した。しかし、人の細胞の割合が低く、移植に使える臓器に成長させるのは困難と判断。割合を引き上げるノウハウを得るため、人に近いサルの胚に注入する実験に踏み切った。 人のiPS細胞に化学物質を加えて改良してから、体外受精後6日のサル胚に注入。翌日時点で人iPS細胞が混在するサル胚を132個つくり、実験容器内で培養を続けたところ、同15日には半分死滅し、同19日には3個が生き残った。この間、遺伝子の働きや異種細胞間でやりとりされる物質などを分析した。 日本では東京大と明治大の研究チームが文部科学省の了承を得て、人iPS細胞をブタ胚に注入し、人の膵臓（すいぞう）作製を目指す研究を進めている。同省の指針が19年に改正され、将来は人の膵臓を持つブタを雌ブタから誕生させることが容認されたが、人の胎内への移植などは引き続き禁止されている。
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