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Thursday, April 15, 2021

CO2排出ゼロ目指し日本企業も応用、1世紀前発見の化学反応に脚光 - ブルームバーグ

日本の一部企業が二酸化炭素(CO2)を回収して活用する「メタネーション(メタン合成)」への投資旋風につながり得るプロジェクトに取り組んでいる。

  商船三井が主幹事を務める「船舶カーボンリサイクル ワーキング・グループ」には、日本製鉄やJFEスチールなど計9社が参加する。 同グループはメタンをCO2と水素から合成するメタネーションを船舶燃料に応用する構想の実現可能性を検証中だ。実現できれば、液化天然ガス(LNG)など化石燃料に代わる、温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロの燃料誕生につながる。

  商船三井の橋本剛社長はブルームバーグとの3月30日のインタビューで、メタネーション技術を活用した船舶燃料が、2050年までにGHG排出量を実質ゼロにする「現実的な回答」ではないかとの見方を示した。既存インフラとの親和性があり技術的にも導入は可能なことから、コストを低減することで「持続可能なプラクティカルな解決に持っていけるかが今後10年、20年かけての課題だ」と述べた。

商船三井、50年温室効果ガス排出実質ゼロ目指す-海運にも脱炭素の波

Ship Carbon Recycling WG

グループには商船三井など日本の企業・法人9社が参加

   メタネーションは約1世紀前にフランスの化学者が発見した反応だ。まず、風力や太陽光など再生可能エネルギーを利用し、水を分解して水素を得る。次に水素と回収したCO2を反応させ、メタンを生成する。そのメタンは、船舶燃料や都市ガスなどに活用できる。

  これまではメタン合成のためのコストや輸送、技術的な問題でメタネーションは試験段階におおむねとどまっていた。しかし、GHG排出実質ゼロのエネルギー需要が増える中で、変化が起きるかもしれない。

  海運にとって、GHG排出実質ゼロの燃料を探し出すことは非常に重要だ。船配備の太陽光や風力発電システムでは大型船舶を動かすのに十分なエネルギーを生み出せない。国連の専門機関である国際海事機関(IMO)は18年、今世紀中のできる限り早期に国際海運分野のGHG排出量をゼロとする目標を策定した。国土交通省の目標は28年までに排出量ゼロの船舶を航行させることだ。

  商船三井の理事で技術部担当執行役員補佐の大薮弘彦氏は「国土交通省の目標を視野に、7-8年の間で形にする方向」とし、同社主導のグループについて「実現可能にするためには何をすべきか課題を挙げて、ステップ・バイ・ステップで進んでいる」と説明。同グループはこの実現可能性を探る活動の現時点での成果を、今年夏ごろ造船・海運系学会誌に掲載予定という。

  日本では再生可能エネルギーの価格が高いため、メタンは海外で合成する必要が生じるかもしれない。そうなると、CO2運搬のための特別な船舶開発が必要となり、商業化の鍵を握るのは水素の価格とCO2長距離輸送の実現可能性となる。それでも規制強化でGHG排出抑制ができない場合のコストも上昇するのに伴い、将来的には「CO2排出量の少ない燃料に価値が出てくるようになってくる」と大薮氏は語り、このような価値の転換は「商業化を含め次の段階に進む上で重要」と付け加えた。

  世界全体ではメタネーションを巡り進行しているプロジェクトが19年時点で38件前後あった。その大半が欧米のプロジェクトだったことがドイツのレーゲンスブルクにある工科大学の調査で分かっている。日本では、政府が50年のGHG排出実質ゼロを 目標とし、 2兆円のグリーン投資促進ファンドを設置したことなどでメタネーションへの関心はさらに高まりつつある。

Inpex’s Koshijijara gas production plant

INPEXの越路原プラント敷地内の関連設備

  INPEXと日立造船は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とともに、メタネーションの 試験設備をINPEXの新潟県長岡市にある越路原プラント敷地内に完成済み。大阪ガスは今年1月、この技術実現の鍵を握る固体酸化物を用いた電気分解素子(SOEC)の試作に成功したと 発表した。

  ただ、技術が進展しても、メタネーションはLNGとの競争に苦しむと予想する向きもある。日本のLNG輸入コストは100万BTU(英国熱量単位)当たり8ドル(約870円)程度で、太陽光の費用がかからなくてもメタネーションがこれに打ち勝つのは困難だと、IHSマークイットのエグゼクティブディレクター、サイド・ナクビ氏は指摘した。

原題: Zero-Carbon Goal Pushes Japan to Bet On Century-Old Technology  (抜粋)

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