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Friday, March 13, 2020

生体センサー開発で「麻薬探知ゴキブリ」も メカニズム解明で広がる応用法 - SankeiBiz

 ゴキブリのフンに含まれるフェロモンを幼虫が感知するメカニズムについて、福岡大と京都大の研究チームが世界で初めて解明し、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。フェロモンを用いた新たな駆除商品などへの応用が期待されるほか、ゴキブリの脳構造の研究も前進させ、ゴキブリを活用した生体センサーの開発につながる可能性があるとしている。(中村雅和)

 鋭敏な感覚細胞

 屋内に生息するゴキブリとしては国内最大で、オレンジ色の頭の模様が特徴のワモンゴキブリが研究対象。フンには、仲間を引き寄せる集合フェロモンが含まれており、主に幼虫が集まる。フェロモンが働いていることは知られていたが、幼虫がどのようにそれを感知し行動するのか、メカニズムは明らかでなかった。

 福岡大理学部地球圏科学科の渡辺英博助教と同科博士課程1年の立石康介さんらの研究チームは、ワモンゴキブリ幼虫の触角にフェロモンを高感度で受容する感覚細胞があることを発見。この細胞はゴキブリのフン一かけらに含まれる20ピコグラム(ピコは1兆分の1)の集合フェロモンに反応することを確認した。これは一般的な匂いを処理する細胞と比べて極めて鋭敏な反応だった。

 立石さんは「極めて微量のフンでも幼虫が引き寄せられることを示唆している。ゴキブリを寄せ付けないためにはフン一かけらまで見逃さない清潔さが重要であることを示している」と解説する。

 逆に、ゴキブリを集めるにはうってつけだ。現在、ゴキブリを誘い込み捕らえる駆除用品の誘引剤は、主に食べ物の匂いが使われている。

 立石さんは「食欲より本能を刺激するフェロモンを使えば、より少量で効果的に多くの幼虫を集められることになる」とみている。今後の研究開発次第でゴキブリ駆除商品に“革命”をもたらす可能性を秘めている。

 性フェロモンも

 渡辺助教らはゴキブリの成虫に交尾行動を起こさせる性フェロモンについても研究した。これまで性フェロモンを感知しないと考えられていた幼虫にも、性フェロモンを高感度に感じる感覚細胞が存在することを発見した。

 幼虫の脳は未成熟なため性フェロモンの情報が伝わっても具体的な交尾行動にはつながらないが、成熟に伴い脳などに何らかの変化が生じているとみられる。

 渡辺助教は「昆虫の脳構造を研究する上で大きな前進」と強調。幼虫と成虫の脳を比較することで、交尾行動を引き起こす新たな脳細胞の発見につながる可能性があるためだ。

 生体センサーへ

 これらを踏まえ、渡辺助教は、ゴキブリの脳細胞や脳構造の研究を進めることで、新たな生体センサーの開発につながると展望する。

 遺伝子組み換え技術を活用して、フェロモンではなく麻薬などの匂いに感覚細胞が反応するようにできれば理論上は可能だという。類似の研究は、すでにカイコなど他の昆虫で試行されているという。

 「特定の匂いに反応するゴキブリを使った生体センサーの開発につながるかもしれない」と渡辺助教。将来、空港などで、麻薬探知犬だけでなく「麻薬探知ゴキブリ」が活躍する日も、遠くないのかもしれない。

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