
直径0・001ミリ未満の微細な気泡「ウルトラファインバブル」(UFB)を注入した水を生かし、地域経済を活性化させようと、一関市の県南技術研究センター(県南技研)と地元企業が共同で取り組んでいる。UFB水は元々、半導体の洗浄などで使われてきた技術。気泡は通常、水面に浮上して破裂するが、目に見えないほど小さいUFBは長期間、水中に残留することができる。注入する気体によって多様な効果を発揮するため、幅広い分野での応用に挑んでいる。
一関市の大林製菓は2017年、UFB水を使って、無添加にもかかわらず冷凍で1か月日持ちし、解凍後は3~4日、つきたての食感が続く餅を開発した。
パートナーの県南技研は、劣化を防ぐ窒素入りのUFB水を使うよう助言。同社は約3年かけ、技術開発に成功した。大林学社長は「どの段階で餅にUFB水を注入すれば効果が出るか、試行錯誤の連続だった」と振り返る。
同社は、この技術で特許を取得し、開発した商品は「ふわmochi」として商標登録した。使い勝手がいいと評判を呼び、全国のホテルや飲食店向けに、年間数十万個販売。サンマリノ共和国の晩さん会では、この餅が前菜やメイン料理の食材、デザートなどに使われ、好評だったという。
さらに同社は、ペルー産の希少なカカオを使った「アマゾンカカオ餅」を開発し、日本航空(JAL)がファーストクラスの機内食に採用した。大林社長は「UFB水を使った餅の売り上げは全体の2割だが、将来的には主力商品になる」と胸を張る。
この躍進を支えているのが、半導体製造装置を販売している一関市の「テクノアート」の技術だ。UFB水の発生装置の特許を持っており、小野寺修社長によると、他社に比べ効率的にUFB水を作ることができるという。
一方、県南技研は一関市が出資し、一関高専とも連携している小さな研究所だ。元々、食品分析が中心だったが、UFB水に無限の可能性があるとして、テクノアートと1次産業などへの応用を試みている。
例えば養鶏場では、鶏の約10%が原因不明で突然死して、生産性の向上が課題だった。二戸市の養鶏農家から相談を受けた県南技研は、成長を促す酸素を含んだUFB水の活用を提案。その結果、死亡率がそれまでより5割減る一方、体重は平均で7・5%増えた。酸素が細胞レベルまで行き届くため、成長を促進し、腸内の悪玉菌の増殖を抑制する効果もあるとみられる。
県南技研はこの成果をもとに、他の畜産業や野菜栽培にも活用するため、実証実験を進めている。小田嶋次勝所長は「技術は人の役に立ってこそ。UFB水で地域が元気になればいい」と話す。(小泉公平)
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